2014年03月10日

確率で人を上手に騙す例

今日は、20日に1度の数学記事の日です。(実は、経済関係と数学関係の記事をそれぞれ20日に1度くらい書くという独自ルールを自分の中で作っていました。)という事で、今日は確率で人を上手に騙す一例をご紹介します。



↑は、A市におけるB社の天気予報結果とC市におけるD社の天気予報結果です。ここでは話を簡単にするために、天気を「晴れ」「雨」だけとして、予報の天気と実際の天気を表にして各確率を出しています。

さて、ここで問題となりますが、天気予報として性能が良いのはB社の天気予報かD社の天気予報かどちらでしょうか?

一応↑画像中の参考として、天気予報の的中率が各60%と68%と出ています。これだけ見ると、D社の天気予報の方が的中率が高いので、天気予報としての性能が良さそうに思えるわけですが、実はこれは大きな間違いです。


何故B社の天気予報の性能の方が良いのかここから説明しようかと思いますが、まずはA市におけるB社の天気予報の結果を見てみましょう。
A市が実際に晴れた日の確率は(a+b)=0.5である一方で、天気予報が晴れの条件の下で実際の天気が晴れた確率はa/(a+c)=0.6 になります。つまり、天気予報の情報がない場合で晴れる確率よりも、天気予報で晴れるという情報がある場合で実際に晴れる確率が、10%程度高くなるわけです。
同様に、A市が実際に雨だった確率は(c+d)=0.5である一方で、天気予報が雨の条件の下で実際の天気が雨だった確率はd/(b+d)=0.6 になり、これも天気予報で雨という情報があることで、実際に雨である確率が予報のない場合と比較して10%上がります。

一方で、B市におけるD社の天気予報はどうでしょうか?B市が実際に晴れた日の確率は(A+B)=0.8である一方で、天気予報が晴れの条件の下で実際の天気が晴れた確率はA/(A+C)=0.8になります。つまりD社の天気予報では、天気予報で晴れという情報があってもなくても、実際に晴れる確率は同じく0.8で同じとなります。また、B市が実際に雨だった確率は(C+D)=0.2である一方で、天気予報が雨の条件の下で実際の天気が雨だった確率はD/(B+D)=0.2になり、こちらも天気予報で雨という情報があろうがなかろうが、実際に雨が降った確率は0.2と変わりません。
種明かしを書けば、D社の天気予報は実際の天気と関係なく、晴れと雨を80%と20%でランダムに出すだけのインチキシステムです。


要は、C市で実際に晴れるか雨になるかの確率に偏りがある事に起因して、的中率という数字だけ見てるとD社の天気予報の方が優秀に見えるって話ですね。大事なのは的中率ではなく、天気予報が無い時の確率から、天気予報の情報があるという条件の下でどの程度条件付確率が上昇するかという事です。

ちなみにこれ(条件付確率・ベイズの定理・情報理論(相互情報量)等々)は天気予報だけでなく、新薬の効果測定やファイル圧縮技術等の基礎理論になっていて、応用範囲が非常に広い話だったりします。人間の直感に頼ると大きな間違いを犯しかねないという良い例ですかね。


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posted by もんじゃ at 15:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 数学

2014年02月17日

二重積分の計算方法の意味

先日、日本で大学教員をやっている友達が「学生に二重積分を教えているのだけど、具体的な積分計算で何を求めているかのイメージがわかっていないっぽいんだよ。どう説明したらいいかな?」という話を聞いたので、取り急ぎ自分が大学院時代に後輩に教えた例を出しておきます。



とりあえず、二重積分の問題として↑を考えましょう。この問題は、ピンクの領域G内でのf(x,y)の二重積分を求める問題です。個人的には、連続関数で積分を考えるよりも離散領域で考える方が計算イメージしやすいので、ちょっと問題を変えて以下の問題を問いてみましょう。



元の問題は連続した閉領域の関数を二重積分する問題ですが、↑画像の問題は1×1サイズの離散空間のメッシュ値(元の問題のf(x,y)と同じく、各メッシュ値を( x + 2xy + y )としている)を総和するだけで、小学生でも解ける問題になるのがわかるかと思います。↑画像では、解き方としてオレンジ領域のy=1〜y=4の各メッシュについて、各列のメッシュ値をx方向に総和した後にy方向に総和して、「291」という答えを導出しています。



一方で解き方としては↑画像のように、最初にx方向に総和するのではなく、y方向を総和した後にx方向に総和するやり方でも同じ「291」という答えを導出できます。(まぁ、当然と言えば当然ですね。)


さて、実は元の連続関数で考える場合も、この離散領域で考えた方法と同じ事をするわけです。連続関数になるので、総和(Σ)ではなく積分(∫)という違いはありますが、考え方はメッシュ値の計算とまったく同じです。(Σと∫の違いは、連続領域を計算するかメッシュみたいに区切られた離散領域を計算するかの違いなだけ。)
元の問題に戻りますが、とりあえず閉領域Gを↓画像の通り2つの領域G1とG2に分割します。



これにより、
と、2つの領域の積分値の和を計算すればOKになります。

まずは、G1から計算しましょう。ここでは離散領域で説明した時と同様に、まずはxで積分した結果を次にyで積分する方法で計算します。

離散領域の場合は、色のついているメッシュをx方向に足し込めば良かったわけですが、連続関数になるときちんと「どこからどこまでを積分するか」を指定しなければなりません。
さて、yの積分範囲が2〜4であることはG1の図形を見れば直感的に理解できるかと思いますが、xで積分する際の積分範囲が(y+1)から(-y/2+5)になるのがちょっと理解が困難かもしれません。



G1部分を拡大したのが、↑画像になります。まず、G1領域をx方向で積分しなければならないのですが、↑画像では3つの直線を例示して積分をしています。どの場合でも始点は@式の直線上の点(y+1,y)から終点はA式の直線上の点(-y/2+5,y)まで積分していることがわかるかと思います。(最後にy方向に積分するため、x方向の積分範囲はyを使って表せばよい。)
実際に、計算すると↓のように求まります。(手計算でやると相当めんどくさくてすみません。)



そして、G2領域についての積分についても↓の図と計算結果の通りで、x方向に積分した後にy方向の積分をします。





という事で、G1領域とG2領域を合わせた閉領域Gでのf(x,y)の二重積分結果は以下の通りになります。



今の例の場合は、領域を2つに分けてx方向の積分を計算後にy方向の積分をしましたが、最初にy方向の積分を計算後にx方向の積分を計算してもOKです。その場合は、↓画像のようにG3とG4の領域に分割して、G3領域はy方向に(x/4+1/2)から(x-1)まで積分後、x方向に2から5まで積分。G4領域はy方向に(x/4+1/2)から(-2x+14)まで積分後、x方向に5から6まで積分することになります。





で、ガリガリ計算すると当然同じ結果が出てきます。

普通の積分と比べると、二重積分はx方向の積分後にy方向を積分するかy方向の積分後にx方向を積分するかの計算順序の自由度が増す上に、通常は1回目の積分で出てくるのが数字ではなく文字式になる(上記で例示したメッシュ値の計算とはここが大きく違う)ので、最初はとっつきにくいところはあるのですが、計算方法としてはメッシュ値の総和計算とやっていることはまったく同じです。


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posted by もんじゃ at 15:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 数学

2014年01月26日

不動点定理

今日は数学や工学のいろいろな分野で使用される「不動点定理」に関する話です。この定理は数学的に説明すると非常に難解なので、一つ例を出そうかと思います。



↑は、モントルーにあるフレディ・マーキュリー像の画像と、その画像を縮小して回転させた画像です。この二つの画像を重ね合わせたものが、↓の画像になります。



さて、↑の重ね合わせた画像の中に緑の点が見えるかと思います。実はこの緑の点、元画像と縮小回転画像の両方の画像共に同一の場所を示していて、共にフレディ・マーキューリー像の後ろの建物の窓の辺りに位置しているかと思います。

不動点定理とは、「縮小/回転(さらに左右上下反転もOKだし、もっと書くと連続変形であればどういう変形でもOK)した画像が元の画像の範囲に入っていれば、上記みたいな位置の一致する点(不動点)が必ず存在する」という定理になります。もちろん、重ねあわせ方で一致する点の場所は変わりますが、この定理の言うところは「不動点が必ず存在する」ということで、僕がこの不動点定理を勉強したときは直感的に「本当にどんな場合でも不動点が存在するの?!」と半信半疑でした。でも、確かに画像を連続的に変形させる限りにおいては必ず不動点が存在するみたいで、「人間の直感に反する興味深い定理だなぁ」と感心した記憶があります。

本記事では二次元画像を用いて不動点の説明をしましたが、別に2次元画像だけでなく、多次元関数にも応用がきいて、ゲーム理論・フラクタル・プログラミング・信号処理・解析学等々、幅広く研究されています。そのうち自分の研究にも応用ができないかなぁと思っているのですが、今のところなかなか思いつきませんねぇ。


ちなみに、wikipediaによると

数学における不動点定理(ふどうてんていり、英: fixed point theorem, fixpoint theorem)とは、自己写像 f : A → A に対して定まる不動点、すなわち f(x) = x となる元 x ∈ A の性質を利用した定理の総称を言う。

【wikipedea 不動点定理】
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8D%E5%8B%95%E7%82%B9%E5%AE%9A%E7%90%86

との事で、これだけ言われても何の事かさっぱりですよねぇ。(笑)


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posted by もんじゃ at 22:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 数学