2014年02月28日

スイスの景気は一服中かこのまま不景気に突入か?

【スイスのGDP考察】
http://zurich-life.sblo.jp/article/68677474.html

とりあえず以前、↑の記事で日本とスイスの2013年第1四半期(1月〜3月)までのGDPはお伝えしておりましたが、その後GDPについては特段大きな動きはなかったので、本ブログでは報告を省いておりました。そんな中、本日スイスの2013年第4四半期(10月〜12月)のGDPが発表されたのでそれを見てたのですが、スイスの景気が一服中なのか今後不景気に突入するか微妙な感じになっているので、今日はその事をご報告します。



↑が、2013年第4四半期までのスイスの名目GDP(季節調整済)となります。前期比と比較すると、小幅ながらもGDP自体は増えているのですが、「これはマズイ!」と思ったのは、2013年第4四半期の「純輸出」の急減と「在庫品増加」の急増です。この表では「純輸出」(=輸出額−輸入額)しか出していませんが、実は2013年第4四半期に物の輸出額が一時的に急減(特に化学・薬品関係の製品)&サービスの輸入が一時的に急増した事より「純輸出」が急減しています。
おそらくヨーロッパの景気減速に伴って、化学製品や薬製品の輸出にブレーキがかかったのでしょう。そして、これらの単価の高い製品が在庫で積みあがったために、「在庫品増加」も連動して高くなったのでしょうね。「在庫品増加」はGDPの内訳としてはプラスに働きますが、急増するという事は、その反動で企業が生産を縮小する可能性が高いわけです。その結果「在庫品増加」の項目の数値もそのうち下がってきて、いずれマイナスになる可能性もあり、その場合は逆にGDPの足を引っ張ることになります。
スイス税関の統計ページを見る限り、2013年12月のみ輸出額(サービスは含まず)が急減していて2014年1月の輸出額は元通り回復しているので、おそらく輸出の急減は一時的な物じゃないかとは思うのですが、何で12月のみに輸出額が急減したのかわからないので、何とも推測しがたいところ。ただ、物の輸出については1月は回復しているので、そこは安心するポイントですね。

また、サービスの輸入が一時的に急増(前期比で+9%増。この項目はGDPを減らす要因になる。)した事なのですが、これ何によるものでしょうね?ここ数年のGDP統計を見る限り、このサービスの輸入が前期比と比較して急増(+5.0%以上)した時期は、2008年第4四半期(リーマンショック直後)と2010年第2四半期(ギリシャ不安の直後)と2011年第4四半期(CHF1=EUR1.2の無制限介入を始めた直後)なので、何かヤバイ事が起きるとサービスの輸入が一時的に急増する法則が成り立っているわけです。今回は何が要因かと思っていろいろ考えたのですが、あまりこれだという明確な要因が思いつかないんですよね。(メルケル首相が2013年9月末の総選挙を勝利したにも関わらず、12月まで組閣できなかったことくらいですかね?)
いずれにしてもこの辺りは、半年先くらいにリリースされる国際収支統計を見れば詳細がわかるのですが、現時点ではこちらも推測しがたいなぁ。

まぁいずれにしても、近日中にスイス税関が2月の貿易額についてのリリースがあるはずなので、もし何か異変があったら、またお伝えします。


今回のGDPを見る限り、スイスは不景気突入か持ち直すかの瀬戸際なのでちょっと心配です。


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posted by もんじゃ at 03:13| Comment(0) | TrackBack(0) | スイス経済

2014年02月05日

UBS銀行のバランスシートの推移

今日はスイスの金融事情を分析するために、スイスの代表的な銀行であるUBS銀行のバランスシート(貸借対照表)を分析してみます。僕のスイス経済に関する記事は大抵マクロ経済の話なのですが、今回はバランスシートからUBS銀行の抱える問題(ひいてはスイスやEUの金融に潜む非常に良くない事象)を紹介いたします。

さて、そもそもバランスシートは何かと説明すると、企業の財務状態を「資産(企業が所有するお金や金融商品等)」「負債(いずれ他人に返済/清算しなければならないお金や金融商品等)」「自己資本(他人に返済/清算する必要の無いお金)」に分けて複式簿記の手法で作成された表の事で、

資産(合計)=負債(合計)+自己資本

という関係式で成り立っています。そしてこのバランスシートの資産や負債の中身を数年間分追跡すると、いろいろとその企業の財務状態が見えてくるわけです。
ちなみに複式簿記の考え方では、「誰かの資産」=「誰かの負債」となります。例えば、僕が持っているお金(CHF1000)を銀行に預けた場合、この銀行は現金CHF1000分増えますが、このお金はいずれ僕に返済する必要のあるお金であるので、この銀行のバランスシートには「資産としてCHF1000が計上される」と共に「負債としてCHF1000が計上される」という感じで、資産・負債の両方が増加します。さらに↑の式を見ればわかるとおり、自己資本の増減(要は自社株の発行等)がなければ資産のみが増減したりとか、負債のみが増減することはありません。
なお、バランスシートは企業の儲け(言い換えるとキャッシュフロー)を直接示すものではなく、所有する資産や負債の中身(ストック)に対する詳細がわかるだけということに注意が必要です。




さて、↑が2011年からのUBS銀行のバランスシートの推移となります。資産や負債の中身についての書き方が日本のバランスシートと比べると異なる部分も多いので、僕もよくわからないところもあるのですが、とりあえずこのバランスシートの推移から読み取れる事を列挙すると、

1.貸出需要と預金需要のアンバランス
資産の「貸出」と負債の「顧客からの預金」を比較すれば一目瞭然ですが、「貸出」の増加ペースよりも「顧客からの預金」の増加ペースが早いことがわかります。日本でも失われた10年の間に同じ状況がおこりましたが、これはつまりUBSの顧客や企業が株や社債等の資産から安全資産である銀行預金に資産シフトしている状況が読み取れる(負債の「発行証券」や「公正価値金融商品」の減少してる事からも、企業や顧客が安全資産にシフトしてる気配が濃厚です)一方で、企業や顧客からの貸出需要が少ないせいで(あるいはUBS銀行が貸し渋りをしている?)相対的に貸出がそれほど伸びていない状況です。

2.目に見えてわかる金余りの状況
UBSの金余りが読み取れるところは、負債の「銀行からの借入金」「発行負債」「レポ」が大きく減少している点です。「銀行からの借入金」や「発行負債」(要は社債の発行)が減少しているという事は、現金調達の必要性が減少しているという事が読み取れます。また、「レポ」(買戻し条件をつけて債券を売る短期の現金調達手法)にいたっては、最盛期の15%程度にまで落ち込んでいるため、ほとんど現金には困っていないのでしょうね。

3.資産運用は高利回りから低利回りへ
資産の「評価益」と負債の「評価損」(バランスシート中の単語としては日本語訳がちょっとおかしいと思いますが)も最盛期と比較して半分になっていますが、おそらくUBS銀行は顧客の預金や自社の金融商品で得たお金を、低利回りだけど安全な国債(おそらく米国物・スイス物・ドイツ物がメインだと思います)を中心とした資産運用にシフトしているのでしょう。これによって「評価益」が減少すると共に、自社の金融商品も低利回りにならざるを得ないことで「評価損」も減少しているでしょう。


という感じでしょうか。1.〜3.の事情を鑑みて推測するに、「UBS銀行は金余りの状況だが、投資先がないので低利回りの国債で資産運用をしている」という事でしょう。このようにバランスシートの資産と負債が急激に縮小する状況は、まさにバランスシート不況と呼ばれる現象です。この状況に陥ると、銀行や企業が儲けたお金を借金返済につぎ込み、新たな投資をしなくなることで、日本の失われた10年のように長期間に渡って経済が停滞します。スイスやEUが日本と同じ道を辿るかどうかわかりませんが、スイスを代表するUBS銀行のバランスシートがこの有り様だと、かなりの高確率で近いうちに欧州はバランスシート不況に突っ込むような気がします。
これを打破する方法は、日本や米国のように「大規模金融緩和と国債大量発行で政府支出を増やすことで需要(キャッシュフロー)を作り出す」という手はあるのですが、EUはユーロの仕組み上(マーストリヒト条約により)それができないので、失われた30年とか失われた40年になるんじゃないかと個人的には予測しています。一方スイスはすでに大規模金融緩和を実施していますが、今のところ(金融緩和により供給されたお金による不動産バブルの懸念もありますが)順調な経済成長を続けているため、政府支出の拡大まではしていないようです。
スイスやドイツはまだしも、他のEU国がほんとに今後大丈夫なのか心配です。まだ調べていませんが、ユーロ圏の他の銀行も、バランスシートの資産・負債が急激に縮小している状況だと思います。(むしろスペインとかイタリアの銀行の方が、物凄い勢いでバランスシート縮小してるんじゃないかと思います。)


という事で、今日はUBS銀行のバランスシートを分析してみました。次は、スイスと日本の代表的な製造業の会社のバランスシートの比較でもやってみますかね。


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posted by もんじゃ at 08:12| Comment(2) | TrackBack(0) | スイス経済

2014年01月15日

発電量が増加しなくても経済成長する国

日本では今後の原発方針についていろいろと議論されているところですが、スイスもそれなりに原発がある国だったりします。今日は、スイスの発電量と電源別の発電割合について調べてみました。



↑画像が、1970年〜2013年までのスイスにおける発電量と電源別発電割合の推移となります。(2013年は1月〜9月分までの統計量を反映しているので、9か月分の発電量になります。)
棒グラフが発電量(左軸)で、折れ線グラフがパーセンテージ(右軸)となります。また、スイスは隣国からの電力の輸出・輸入がありますが、総じて見た場合は自国発電量に対する純輸出のパーセンテージは+-4%以内くらいに収まっているので、電力についてはほぼ自給自足をできる状況です。まぁ永世中立国であることから、他国に頼らず自給自足の精神があるってことですよね。
ちなみに、水力発電の「貯水式」はいわゆるダムを作って水を溜め込み計画的に水を流して発電させる方式で、「流込式」は川の流れでそのまま発電をするので、豊水期は発電量が多くなるけど渇水期は発電量が少なくなる方式ですね。

さて、スイスでは1970年時点では水力発電による発電量が90%以上占めていましたが、その後原子力発電が躍進して、現在では水力発電(貯水式)・水力発電(流込式)・原子力発電がそれぞれ30%程度を占めて、残り5%程度が火力発電等となっています。水力発電は外国の力(燃料の輸入等)を一切借りずにスイスの独力で発電できますし、原子力発電にしたって必要最小限のコスト(スイスではウランが採掘できないので燃料棒は輸入物だと思うのですが)ですみますので、電力にかけるコストは相当少ないかと思います。
やはり、スイスは火力発電所は作りたくないのでしょうね。石油や天然ガスが採掘できないから、スイスにとって火力発電所は燃料代の輸入で高くつくのがよくわかっているかと思います。この辺りの事情は日本も同じなんですけど、↓の記事の通り、日本は東日本大震災の影響で原子力発電を止めて火力発電所をフル稼働にした事により、原油や天然ガスを多く輸入することで貿易赤字国に転落してしまっています。

【日本の電源別発電電力量構成比】
http://www.fepc.or.jp/about_us/pr/sonota/__icsFiles/afieldfile/2013/05/17/kouseihi_2012.pdf

【スイスの国際収支統計】
http://zurich-life.sblo.jp/article/69225594.html

そしてスイスで一番びっくりするのは、2000年以降発電量の伸びが止まっているわけですよ。一方で実質GDPは2000年よりも20%程度増加しています(参考リンク)。つまり、スイスでは経済活動が活発になっているにも関わらず発電量が変わらないわけで、スイスでは電力を使う産業(主に製造業)が経済を引っ張っているわけではないという事を示唆する資料でしょうね。(製造業が主体である日本の感覚から考えるとあり得ない状況です。)

いやぁ、電力すらほぼ自国でほぼ自給可能(しかも発電量の50%以上が水力発電で超クリーン)で、しかも発電量が増えなくても経済成長するんだから、やはりスイスは驚愕の国です。


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posted by もんじゃ at 15:31| Comment(0) | TrackBack(0) | スイス経済